【基礎編】話題のBigQueryとは?特徴や使い方、利用料金、広告運用でできることなどを詳しく解説
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昨今のWebマーケティングにおいて集客にかかる媒体・経路は多種多様で、製品やサービスの情報取得から購入に至るまでのプロセスは、以前とは比較にならないほど複雑化しています。
こうした状況下では、ユーザー属性や購買行動に関する膨大なデータを精緻に分析し、その結果をもとに意思決定を行う「データドリブン」によって販促施策をブラッシュアップしていく必要があります。ただ漫然と従来の販促手法を繰り返したり、担当者の経験則に依存したりしているのでは立ち行かず、これはWeb広告運用においても変わりません。
そこでぜひ活用していただきたいのが、BigQuery(ビッグクエリー)というツールです。今回は、BigQueryの機能や用途などの基礎的な知識、実際の活用事例などをご紹介していきます。
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目次
BigQueryとは?
そもそも、BigQueryとはどんなツールなのでしょうか。名前を耳にしたことがあっても、使い道はよく分からないという方は意外に多いかもしれません。
BigQueryは、Googleがクラウド上で提供している「データウェアハウス(DWH)」の名称です。2012年にリリースされました。
ではデータウェアハウスとは何かというと、様々なシステムから膨大なデータを集約して保存し、それらを分析しやすいように整理する仕組みを持ったスペースのことです。
ここでいうシステムとは、例えば社内の基幹システム(顧客管理、会計、人事管理など)や、外部のWebサービス(Web広告媒体、ECサイトなど)が該当します。
なお「ウェアハウス(Warehouse)」とは英語で「倉庫」という意味で、その名前の通り、データの倉庫といったイメージを持っていただけばおおむね間違いありません。
膨大なデータを保存するスペースといえば、多くの方は「データベース」を思い浮かべるかと思います。
データウェアハウスもデータベースも、データを保存・格納するという機能においては同じですが、両者には様々な違いがあります。詳しくは割愛しますが、大まかにいうと、データベースは「システム等から取得・蓄積したデータの集合体」であるのに対し、データウェアハウスは「集積したデータを分析しやすいように構築した情報システム」といえるものです。
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BigQueryの特徴・メリット
次に、BigQueryが他のデータウェアハウスと比べて特に際立っている特徴やメリットについてご説明します。
データ処理が非常に高速
BigQueryの最も大きな特徴は、データの処理速度が非常に速い点です。TB(テラバイト)・PB(ペタバイト)単位の膨大なデータに対するクエリ(ソフトウェアに対する処理要求)も、数秒~数分で処理が完了します。
※1TB=1,000GB、1PB=1,024TB
同じことをExcelやスプレッドシートでやろうとすると、データの処理はおろか読み込むことすらできないでしょう。
BigQueryがこれほど高速なデータ処理を行える理由は2つあります。
1つは、Googleの広大なリソースを活用した「ツリーアーキテクチャ」と呼ばれる仕組みです。クライアントからクエリを受け取ったサーバー(ルートサーバー)から、他の多数のサーバー(リーフサーバー)にクエリがツリー状に広がっていき、データの分散処理を行います。少々分かりにくいかもしれませんが、要は1つのクエリを複数のサーバーで同時並行で処理しているというのがポイントです。
もう一つは、一般的なデータベースでは行単位にデータを保存するのに対して、BigQueryは列ごとに保存している点です。「カラム型データストア」といわれますが、特定の列のデータをまとめて扱う集計処理(例えば、何万件もの注文履歴から「顧客名」と「購入金額」だけを集計するといった処理)などに非常に長けています。
各種ツールとの柔軟な連携が可能
BigQueryは、様々なデータソースや外部ツールと連携して、大量のデータを格納・整理できます。またGoogleアナリティクスやGoogleスプレッドシートなどGoogleが提供する各種プロダクトとの親和性が高く、データの分析や整理を強力にサポートしてくれます。
中でもWeb広告代理店の皆様に注目していただきたいのは、Googleが提供しているBIツール・Googleデータポータルとの連携を簡単に行える点です。
BIツールとは、企業内にある様々なデータを集計・可視化・分析し、ビジネスにおける迅速な意思決定を支援するツールの総称です。Googleデータポータルを使えば、BigQueryで集積したビッグデータを多角的に分析して広告レポートを作成する、各種広告指標を軸に複数のアカウントをまたいだ分析を行うといった活用ができます。
※ BIツールについてはこちらの記事もご参照ください。
またBigqueryはPythonとの連携も行えます。PythonでBigQueryに接続し、テーブル作成やデータの登録・取得・更新・削除などが可能です。Pythonの柔軟性とBigQueryの高速な処理能力により大量のデータを効率的に操作・分析できます。
利用コストが非常に安い
BigQueryは、基本的にサービスを利用した分だけ料金が発生する従量課金制をとっており、そのため他のDHWと比べて利用料金が非常に安いというメリットがあります。
これはBigQueryに限らず全てのGoogleプロダクトに言えることですが、高機能で安定性の高いツールやサービスを無料あるいは低料金で提供してくれるのは、とてもありがたいですよね。
(BigQueryの料金体系については後述します)
技術的なハードルが低い
BigQueryは完全サーバーレスのクラウドサービスですので、全ての機能をWebブラウザのUIで簡単に利用できます。
また、クライアント側の実行環境の設定、スケーリング(分析に必要なサーバーなどのリソースを増減する)やデータベース性能を改善するためのチューニング、インデックス設計といった、専門知識がなければ難しい作業も不要なため、非エンジニアでも比較的容易に活用できます。
SQLクエリによるデータ分析ができる
BigQueryは、データベース言語であるSQLを用いてデータの抽出、結合、集計、フィルタリングなど様々な操作を実行できます。BigQueryの高速な処理能力とSQLの柔軟性を組み合わせて大規模なデータセットを迅速かつ効率的に分析し、ビジネスインテリジェンスやデータ分析に基づく意思決定につなげることも可能です。
また上述の「技術的なハードルが低い」にも関連しますが、SQLは一般のプログラミング言語よりもシンプルな言語で扱いやすく、多くのエンジニアがデータの操作や分析に活用しています。BigQueryが多くのビッグデータプロジェクトで利用されている一因と言えるでしょう。
BigQueryでできること
ここまでBigQueryの特徴についてご説明してきましたが、それで実際にどんなことができるのか、今一つつかめないでいる方があるかもしれません。
そこでBigQueryの活用事例の一つとして、当社のレポート自動化ツール「アドレポ」とBigQueryで作成したFacebook広告の運用レポートをご紹介します。
上の画面がレポートのアウトプットです。
インプレッション、CTR、消化金額、CPCといった需要な広告指標のパフォーマンス実績を、表やチャートで分かりやすく表示します。レポートは日次・週次・月次・キャンペーン別・広告セット別で確認でき、ワンクリックで表示を切り替えられます。
こちらは、広告別のパフォーマンス実績を画像付きで表示したレポートです。数値のみのテーブルに比べて非常に分かりやすくなっています。
これらのレポートはすべてデータポータル上にあるためブラウザからリアルタイムで閲覧が可能。クライアントや社内関係者との情報共有も簡単です。
このレポートがどのように作られているかというと、まずFacebook広告の運用データをアドレポがAPIで自動取得し、次にそのデータをアドレポがBigQueryに自動出力します。さらにBigQueryと連携させたデータポータル上で表やチャートを作成し、レポート化するという流れです。
一見煩瑣に思われるかもしれませんが、一度設定してしまえば、その後の運用はほとんど自動化されますので非常に効率的です。
気になるBigQueryの利用料金は?
どれほど便利なツールでも、導入にあたってやっぱり気になるのはコスト面。BigQueryの利用料金はどうなっているのでしょうか。
BigQueryでは用途に応じて異なる料金体系が設定されており、以下に主な料金プランをご紹介します。(金額等はすべて2023年1月7日現在)
ご覧いただけば分かる通り、BigQueryは他のDWHと比べても非常に低料金です。数TBのデータを処理・保存なら数千円程度の費用で行えてしまいます。
BigQueryの料金体系についてより詳しく知りたい方は公式ヘルプをご覧ください。
データ分析
BigQuery上でクエリを実行し、データを処理・分析するための料金です。従量制と定額制の2タイプがあります。
従量制では、処理されたデータ量1TBあたり6.00ドルと非常に低額です。さらに毎月1TBの無料枠があり、ちょっとした規模のデータソースであればこの枠内で十分処理できるでしょう。
定額制では、専用のスロット(クエリを実行するための仮想CPU)を月単位または年単位で購入します。100スロットあたり月額2,400ドル、年契約だと月額2,040ドルです。
データ保管(ストレージ)
BigQueryにデータを保存するための料金です。
アクティブストレージ(過去90日間に変更されたテーブル)はデータ量1GBあたり月額0.023ドル、長期保存(90日間連続で変更されていないテーブル)は1GBあたり月額0.016ドルです。保存期間に応じて日割り計算となります。
また、こちらも毎月10GBの無料枠を使えるため非常に低コストです。
データ取り込み(インポート)
APIを用いてBigQueryにデータソースを取り込むための料金です。
通常の処理(バッチ読み込み)においては基本無料で行えます。
データが常に生成され続けているなど、APIによるリアルタイム処理(ストリーミング)が必要な場合は別途料金が発生します。
なお、取り込んだデータは上記ストレージの料金対象となりますのでご注意ください。
データ抽出(エクスポート)
BigQueryのテーブルデータをエクスポートするための料金です。
通常の処理では、Cloud Storage(Google Cloudのデータ保存サービス)に基本無料でエクスポートできます。ただしCloud Storageの利用料金は必要です。
APIによるリアルタイム処理(ストリーミング)には別途料金が発生しますが、1TBあたり月額1.32ドルと非常に低額で、さらに毎月最大300TBの無料枠もあります。
新しい料金体系「BigQuery Editions」
「BigQuery Editions」とは、2023年3月30日に発表されたBigQueryの新しい料金体系です。先ほど「データ分析」の料金に従量制と定額制があるとご説明しましたが、BigQuery Editionsは、その定額制の後継にあたるものです。
BigQuery Editionsは、処理されたバイト数ではなくスロット(SQLクエリ実行のために使用される仮想CPU)単位の課金であるのは従来の定額料金と変わりませんが、「スロットの自動スケーリング」が利用できるようになっています。
これは、あらかじめ設定したベースラインのスロット数に対して固定料金が発生し、それ以上にクエリ処理の負荷が大きくなるとスロット数が自動的に追加されるという仕組みです。いわば定額制と従量制がミックスしたもので、これによって作業負荷に合わせた料金の最適化が可能になります。
また、BigQuery Editionsには「Standard」「Enterprise」「Enterprise Plus」という3つのエディションが用意されています。それぞれ利用可能な機能に違いがあり、要件・用途に合わせて選択できます。各エディションの概要と料金は以下の通りです。
- Standard:1スロット時間当たり0.04ドル
機能は少なめで標準的なデータ分析や開発環境向け。1,600スロットの上限あり。 - Enterprise:1スロット時間当たり0.06ドル
高度なデータ解析が利用でき料金と機能のバランスが取れたプラン。 - Enterprise Plus:1スロット時間当たり0.10ドル
セキュリティ・可用性・コンプライアンスなどに関する機能が豊富。
それぞれの機能面の違いについて詳しくはGoogle公式ヘルプをご覧ください。
なお現在「定額料金」を利用している場合は、そのプランごとに自動的にBigQuery Editionsへの移行が行われます(どのエディションに移行するかは選択可能)。
広告代理店がBigQueryに注目する2つの理由
どちらかというとデータエンジニア向けのツールという印象が強いBigQueryですが、広告代理店でWeb広告運用に携わる方々にも人気の高いツールです。それには2つの理由があります。
レポーティング業務の効率化
理由の一つは、BigQueryの活用によって広告レポートの作成業務を大きく効率化できる点です。
先ほどご紹介した当社事例がまさにそうですが、広告媒体に蓄積された運用データをBigQueryで整理・分析し、BIツールを用いてビジュアライズを行うという手法は、手動でのレポート作成に比べて工数を大幅に削減でき、かつスマートで柔軟性の高いレポーティングを行えます。
広告媒体のデータをBigQueryに取り込む手段は様々ですが、アドレポは20数種類の広告媒体とのAPI連携とBigQueryへの自動出力に対応。簡単な設定で、複数媒体のデータ集計からBigQueryへのエクスポートまで自動化できます。
実際に広告運用の現場でアドレポのBigQuery連携を活用されている事例も多数ございます。その一つを詳しくご紹介していますのでぜひご覧ください。
GA4連携で高次元のデータ分析が行える
もう一つの理由は、BigQueryはGA4(Googleアナリティクス4)との連携が無償で行える点です。
Googleアナリティクスの最新版であるGA4は、従来のアナリティクス(UA:ユニバーサルアナリティクス)と比べてよりユーザーの属性や動向に関するより粒度の高い情報を計測できます。
普段Googleアナリティクス上で閲覧できる表やデータは、GA4で計測された生データを集計して表示したものですが、BigQueryとGA4を連携させると、この生データを直接BigQueryにエクスポートできます。これによって集計前のユーザー行動情報を、様々な切り口から自在に分析できるようになるのです。もちろんBIツールによる可視化や、他の外部ツール等のデータと突き合わせての分析もできます。
従来のアナリティクスでは、BigQueryへのエクスポートは有償版でのみサポートされていましたが、GA4では無償版でも行えるようになりました(100万イベント/日の上限あり)。この変更をうけて昨今は広告代理店でのBigQueryへの注目度が高まっており、代理店主催のGA4関連ウェビナーでBigQueryを取り上げることも珍しくありません。
なおGA4については、こちらの記事でも詳しく取り上げているのでぜひご覧になってください。
BigQueryの利用方法
それでは実際にBigQueryを利用する手順を簡単にご紹介します。
① Google BigQueryの公式サイトを開きます。
画面上の「BigQueryの無料トライアル」をクリックします。
② Google Cloudの登録画面が開きますので、画面の案内に従って必要な情報の入力を行います。
③ Google Cloudの登録後、画面のメニューから「BigQuery」を選択し、新しいプロジェクトを作成します。
※BigQueryのアカウント構造は、上位から「プロジェクト」「データセット」「テーブルという階層になっており、プロジェクトの中に複数のテーブルが、テーブルの中にデータが格納されます。
④ プロジェクト内にデータセットを作成します。
作成画面では、データセットIDやロケーションタイプなどを設定します。
⑤ データセット内にテーブルを作成します。
作成画面では、テーブル名やアップロードするデータなどを設定します。
⑥ テーブルに読み込んだデータを確認する際は、テーブルの画面で「プレビュー」を選択します。
データを解析する際は、「クエリ」を選択してエディタで処理したいクエリを入力後、実行します。
知っておきたいBigQueryの注意点
BigQueryが非常に優れたツールであるのはここまでご説明してきた通りですが、利用にあたって注意しておきたい点もあります。導入を検討されている方はぜひ確認しておいてください。
DBに関する一定のリテラシーが必要
「BigQueryは簡単に始められる」と聞いて、安易に社内に導入してみたものの、思うように運用できず頓挫してしまったという方は少なくないようです。
BigQueryを導入・利用するための技術的なハードルが他のDWHより低いのは確かです。とはいえ、SQLの記述やエラー解消を行うには一定のスキルが必要ですし、また使用方法などに関するベンダーのサポートも基本ありません。
担当者はデータベース・SQLに関する一定のリテラシーを持って臨む必要があります。逆にそうした人材を確保できない場合や、より複雑な処理・分析が求められる場合は、BigQueryを含めたシステム開発を外注するのも一手でしょう。
コストがよけいにかさむリスクがある
BigQueryの強みの一つに「利用コストが低い」という点がありますが、これも適切な運用を行ってこそです。
BigQueryでデータ処理を行う際、よほどのヘビーユーザーでなければ、オンデマンド料金(従量制)で利用される方が大半でしょう。クエリで処理するデータ量に応じて課金される効率的な仕組みですが、一方で、クエリ処理が最適化されていないと、必要以上にデータ量がかさみ、結果的に高コストになってしまうケースがあります。クエリ処理の最適化を行うのにも関連の専門知識が不可欠です。
まとめ
今回はGoogle製のデータウェアハウス・BigQueryの特徴やメリット、活用事例などをご紹介しました。
今日、Web広告代理店に求められる役割は非常に大きいと思われます。広告運用から導かれた膨大なユーザー行動情報をもとに、リアルタイムで実用性のある分析を行い、費用対効果を最大限に高めるために必要な改善施策をクライアントに提案し続けなければなりません。こうしたニーズに応えるために、非エンジニアでも比較的簡単にデータを分析できるBigQueryは貴社の大きな力となるでしょう。また使ったことはない方も、この機会にぜひ触れてみてください。
そして当社の「アドレポ」はBigQueryとの連携に標準対応しています。レポート自動化ツールとしてはもちろん、広告媒体とBigQueryの橋渡し的な利用においても、多数の広告代理店様から高いご評価を頂いています。BigQueryとアドレポの併用で、ワンランク上のWeb広告運用を実現しましょう!
※アドレポに限らず、広告レポート自動化ツールはBigQueryに対応しているものが多くあります。ツールの選び方についてはこちらの記事を参考になさってください。
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